サンタクロースの大旅行/葛野浩昭

サンタクロースの大旅行 (岩波新書)
葛野 浩昭
岩波書店
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 うむ、サンタクロースと、時代と地域の文化について書かれている。サンタクロースってこんないろいろな紆余曲折があって、現代日本を生きる僕のイメージするサンタクロースになったのかーと。

 このようにコカ・コーラ社は、すでに人々の間で定着していた「ライエンデッカーの『ポスト』のサンタクロース」を意識しながらも、それとは別の「コカ・コーラのサンタクロース」を作ります。そして、これを巨大な資本力と特有の広告戦略で全米へ、さらには全世界へと広げていきます。「子供のいるところだったら、どこへだって出かけるぞ」、それがサンタクロースのモットーです。そして、「人間のいるところなら、どこへだって売りに出かけるぞ」がコラ・コーラ社の目標です。第二次世界大戦後、コカ・コーラ社がアメリカ資本主義のシンボルと目されるようになると、サンタクロースもまたアメリカ資本主義のシンボルになっていきます。 (p.109)

「ロマンチック・ラヴで結ばれた夫婦」そして「そのラヴの結晶としての子供」という〈家族〉観が力をもつ以上、〈家族〉と〈恋愛〉とは表裏一体の関係にあります。そして、この現代日本社会では、〈家族する〉ためであれ〈恋愛する〉ためであれ、そこには日常とは違う儀礼的な過剰消費行動が必要とされること、そのことを年中行事・季節儀礼としてのクリスマスは何よりも雄弁に物語ってくれているように思われます。 (p.152)

 そして一九八〇年代以降、フィンランドが自らを「サンタクロースの国」だと宣伝し、海外から観光客を引きつけるための目玉としてサンタクロースを重要視するようになると、世界的に通用するアメリカン・サンタクロースの方がいよいよ全面に出てきて、小人たちはサンタクロースのお手伝いといった存在になってしまったのです。 (p.156)