健全な肉体に狂気は宿る/内田樹・春日武彦

 毎度の内田本。精神科医の春日氏との対談。安定の面白さ。

ロングスパンの人間関係とショートスパンの人間関係の両方をバランスよく持っていることが大切だと思うんです。 (p.91)

「愛してる?」と訊かれて、「よくわからない」なんて正直に言う人がいますけど(笑)、大バカ者ですよ。わかんないに決まってるんだから。「愛してる」とはどういうことかなんて、誰にもわかりっこない。わからないからこそ、「愛してる」とまず言ってみて、それから「愛している」っていうのは、こういうことかな、ああいうことかなといろいろ考えながら、「後づけ」してゆくものでしょう。 (p.113)

ぼくは常識というのは非常にいいものだと思っているんです。何よりも、常識というのは原理にならないから。「これって常識でしょ」と言っても、「江戸時代も常識だったの?」とか「アフリカでも常識なの?」と言われたら、グッと詰まるでしょう。つまり、常識というのはもともと地域限定、期間限定のテンポラリーなものなんですね。 (p.136)

何かが起こったときにそれに単一の責任者が必ずいるはずだというふうにはぼくは考えないんです。自分の身に起こった不幸な出来事でも、それはいろんなファクターの複合効果であって、単一の原因、ただ一人の有責者によるものではないだろうと思っているんです。 (p.140)

 ひとりひとりの人間にはその人にとっての「最適サイズ」というものがあって、それよりも大きくても小さくても、身体には障害が出てきます。ぼくたちが探さなければいけないのは、今の自分にとっての最適なサイズなんです。生存に一番有利で、身体的ポテンシャルが発揮できて、かつどこにも過負荷のかからないぴったりの体型というものがひとりに一体ずつ必ずあるはずなんです。それより太っても痩せても、どちらにしてもパフォーマンスは下がる。
 でも、今ダイエットする人でそんなことを考えている人はいないでしょう?初めに数値目標があって、それに向けて痩せていくんだから。そうじゃなくて、自分がどんな体型だと一番快適で、一番性能がいいのか、それを探るべきなのに。 (p.206)