知識人とは何か/エドワード・サイード

 再読。また何年後かに読み返したい。

わたしにとってなにより重要な事実は,知識人が,公衆に向けて,あるいは公衆になりかわって,メッセージなり,思想なり,姿勢なり,哲学なり,意見なりを,表象=代弁し肉付けし明晰に言語化できる能力にめぐまれた個人であるということだ。
(p.37)

追放/亡命の身になることは,生まれた故郷から完全に切り離され,孤立させられ,絶縁状態になることと一般に考えられているが,これはまちがった考えかたである。そのように,まるで外科手術的にすっぱりと切り離せるものなら,あとに残してきたものを思い出すことも,とりもどすこともできないとあきらめがつくわけだから,すくなくとも慰めにはなる。ところが実際には,ほとんどの追放者/亡命者にとってなにがこまるかといえば,故郷を遠く離れて暮らさねばならないということよりも,むしろ,今日の世界では,自分が追放/亡命の身であることを,いやでも思い知らされるおおくのものに囲まれて暮らさなければならないということなのだ。
(p.87)

 最終章,最後の段落は,本当に熱い.

知識人として自分には,ふたつの選択肢がある。ひとつは,最善をつくして真実を積極的に表象することであり,いまひとつは,消極的に庇護者や権威者に導いてもらうようにすることである,と。
(p.192)

知識人とは何か (平凡社ライブラリー)
エドワード・W. サイード
平凡社
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